学校図書館情報化セミナー セミナーレポート

特定非営利活動法人 Educe Technologies/まかせて!学校図書館プロジェクト 主催

2013年9月28日、東京大学大学院情報学環福武ホールにて「学校図書館情報化セミナー デジタル教材活用編」が開催されました。関東地方を中心に、全国各地から学校図書館関係者や小・中学校の教員など70名の参加がありました。セミナー当日の様子をレポートします。

講演

ワークショップ

パネルディスカッション

河西由美子先生

河西由美子先生

講演
学校図書館を学びの場にするために

講師 河西由美子(玉川大学通信教育部教育学部 准教授)

河西先生の講演では、学校図書館の活用に関する動向や探究学習の課題、今後の学校図書館利用指導について、お話をいただきました。

***河西先生の講演より***
近年、日本では、全国学力調査の分析から計画的・継続的な学校図書館活用が学力向上に効果的であることが証明され、以前にも増して、学校図書館は注目されてきています。また、北米を中心に、海外の学校図書館では2000年以降学校図書館機能を活用した探究型の学習が志向されています。
日本でも大正自由教育のころから学校現場で調べ学習が行われていたことがわかっていますが、それら学習の中で何が学ばれて、次につながっていくのか見えにくく、「探究学習(調べ学習)」の定義や評価は今日でも定まっていません。そのうえ、探究学習の指導方法の難しさや準備時間不足などの理由から、教員が図書館を効果的に活用できていない現状がありました。そこで、誰でも簡単に図書館や本を活用できるような支援ツールの必要性が高まり、今回の『まかせて!学校図書館』の教材開発が始まったのです。
探究活動を行う前段階として重要な要素となるのが、学校図書館の「利用指導」です。図書館の利用方法を子どもたちがしっかりと理解していなくては、学校図書館での学習活動は成り立ちません。利用指導においてレファレンス・サービスなど学校図書館ならではの機能や活用方法を紹介することは、子どもだけでなく先生方への刺激・意識付けとしても効果的であると言えます。このように、利用指導に充てられる時間は少ないにも関わらず、その中で求められる指導内容は多く、非常に重要な役割を担っているのです。

監修者として開発に携わったデジタル教材「まかせて!学校図書館」は、そのような教育現場の実状を踏まえ、学校図書館での指導に不慣れな先生方も学校図書館の利用指導を行えることを目的として開発されたものです。今回参加された皆様には、今後の指導の新しいツールとして、デジタル教材を活用した指導のノウハウを知っていただき、ぜひ周囲の先生方にも伝えていっていただければと思います。

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ワークショップ
デジタル教材「まかせて!学校図書館」を使ったワークショップ

●コース1 小学校版  講師 藤田利江(神奈川県大和市教育委員会 学校図書館スーパーバイザー)
●コース2 中学校版  講師 伊藤史織(玉川学園 司書教諭)

藤田利江先生 伊藤史織先生

藤田利江先生   伊藤史織先生

「小学校版」「中学校版」の2つのコースに分かれて、デジタル教材「まかせて!学校図書館」を使ったワークショップが行われました。

小学校のワークショップでは、「まかせて!学校図書館」の4つのテーマを取り上げた模擬授業を行いながら、指導する中での具体的な手立てや配慮すべき点についてのお話がありました。
参加された方は、グループに分かれて、テーマについて話し合ったり、実際にワークシートを体験されたりしました。話し合いの中では、授業の構想や国語科・総合的な学習の時間などでどのように教材を活用することができるかについて、参加者同士で情報交換、意見交換がされていました。
最後に、藤田先生より、「学習に関する資料を用意することにより、様々な教科で学校図書館を活用することができ、充実した指導をすることができます。」とお話がありました。

中学校のワークショップでは、「まかせて!学校図書館」に入っている「情報カード(メディアグラフィーカード)」を使って、進められました。
「情報カード」とは、調べた内容や情報源を記録するためのカードです。「中学生のレポート指導では、執筆後の指導では挽回することが困難なため、調べる段階での適切な指導が必要です」と伊藤先生。調べた情報を正確に記録するのに有効な「情報カード」が調べる段階で役立つとお話がありました。
その後、様々なメディアを使って調べた記載済みの「情報カード」が配られ、グループごとに気づいたことを話し合いました。「情報カード」には適切でない例も含まれており、そこから情報源の信頼性や妥当性、使用するメディアのバランスなど、指導のポイントについて伊藤先生がまとめられました。

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パネルディスカッション
デジタル教材「まかせて!学校図書館」開発の経緯

堀田龍也先生

堀田龍也先生

藤田利江先生 伊藤史織先生

小林路子先生    今井亜湖先生

藤田利江先生 伊藤史織先生

鈴木孝則課長

コーディネーター 堀田龍也(玉川大学教職大学院 教授)
パネリスト 小林路子(慶應義塾大学 非常勤講師)
パネリスト 今井亜湖(岐阜大学教育学部 准教授)
パネリスト 鈴木孝則(スズキ教育ソフト株式会社企画部情報デザイン課 課長)

デジタル教材「まかせて!学校図書館」の開発に携わった先生方より、開発の経緯についてパネルディスカッション形式でお話をいただきました。

堀田先生の「学校図書館を利用し、情報を集め、整理し、伝える能力は、今日要求される能力であり、情報活用能力の育成は今日の課題です。そのため、図書館の利用をうまく推進してほしいという願いが開発背景にある。」というお話からパネルディスカッションは始まりました。

小林先生より、教師や学校司書の現状についての説明がありました。
学校現場では、若い司書教諭が増加していたり、学校司書が非常勤職員のケースが多い、とのことでした。そのため、「教師や学校司書が、学校図書館で育てる知識を知らない」「教師や学校司書の指導経験不足のため、学校図書館を活用する基本的なスキルを子どもたちに伝えることができない」ということが起こっているそうです。この2つの現状を受けて、「子どもたちに学校図書館を活用するスキルを育てるため、教師にも学校司書にも指導法を身に付けてほしい。これが一番大きな願いです。」とお話がありました。

鈴木課長より、「まかせて!学校図書館」の製品紹介がありました。
「まかせて!学校図書館」は、学校で一人職である司書教諭や学校司書を助けるために、開発された、とのことでした。先進的に実践をされている先生方のノウハウが詰まっているので、指導の不安を取り除くことができる教材であるとお話がありました。 実際に教材を操作しながら、ストーリー(提示用スライド)の編集やワークシートの印刷などの機能について説明がありました。

今井先生より、デジタル教材活用の効果や「まかせて!学校図書館」の開発意図についてお話がありました。
デジタル教材の活用については、「デジタル教材を教師が使用する場合には、学習内容をわかりやすく説明することがポイントです。」とお話がありました。教材の開発については、今井先生は、大学で小学校教員を養成されており、生徒が教壇に立った時にこの教材を利用し、授業を行えるように…という目線で携わったそうです。「まかせて!学校図書館」は、簡単に操作ができて、シナリオ形式で指導すべき内容もわかりやすくなっているため、初心者でも授業に取り組みやすいとお話がありました。

最後に、堀田先生より「学校図書館の指導の減少や教師の多忙さがあるため、すぐに学校図書館の指導ができるこの教材は時代のニーズである。「まかせて!学校図書館」をきっかけに、先生方のコミュニティーが広がってほしい。」とまとめがありました。

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