- 単元
- おはやしのリズムをつくる
- 単元目標
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- 音楽の構造(旋律やリズム)と曲想の関連を理解し、思いや意図に合った表現をするために、呼吸や発音を意識して無理のない歌唱法を学ぶとともに、設定した条件を基に即興的に音を選んで表現する力を身に付ける。
- 旋律や音色、リズムを聴き取って、その特徴や面白さを感じ取り、聴いたことと感じたことの関係を考えながら、曲の個性を引き出す表現を工夫し、どのように歌ったり演奏したりするかについて意識的に考え、音楽の魅力を深く味わう。
- 我が国や諸外国の多様な音楽の特徴や、それが人々の生活とどう関わっているかに興味をもち、音楽活動を楽しみながら、積極的かつ協力的に学び、生活の中で生まれた様々な音楽を親しむ。
お悩み
「自分たちが学べていることと、これから考えなきゃいけないこと(課題)が一発で分かったら便利だよね。」という意見が児童からよく聞こえていました。児童は自分自身の課題は分かっても、グループや学級全体での課題が把握しづらいことを不便に感じていたようでした。
また、今回はプログラミングを活かした旋律づくりの授業を展開しました。児童の中にはプログラミングにかなりの苦手意識をもつ児童もいるので、そういった児童がどんなことに苦手意識を特に感じているかについて、私自身が知ることで改善を図りたいと考えていました。
学習の流れ
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第1~3時
「ソーラン節」の歌い方や「秩父屋台ばやし」、おはやしづくりの技について学ぶ。 -
第4時
グループごとに、つくるおはやしのイメージを考える。 -
第5~6時
- イメージに合ったおはやしをScratch®で作成する。
- 今日の活動で分かったことや感じたことについて、トラビを使って振り返りを行う。
- 学級やグループごとに、振り返りの内容を生成AIで要約し、提示する。
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第7時
それぞれのグループのおはやしを共有する。 -
第8~9時
- おはやしのリズムを構成する楽器について学び、グループのおはやしを練習する。
- 今日の活動で分かったことや感じたことについて、トラビを使って振り返りを行う。
- 学級やグループごとに、振り返りの内容を生成AIで要約し、提示する。
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第10時
グループごとにおはやしの発表会をする。
学習の様子
今回の単元では、旋律づくりをメインとして、プログラミングを活かした授業を展開しました。
トラビを活用したのは主に振り返りの場面です。児童ごとにトラビの振り返りシートに記入し、それを生成AIで要約したものを提示し、学級全体やグループごとの振り返りを行いました。児童がその授業の中で何を考え、何を課題としたのかが明確になるように、生成AIを使用して分析し、その結果をもとにさらなる次時への課題を見つける授業展開に活かしました。
振り返りを行う際には、生成AIでまとめたことに加えて、授業の中での児童の気付きなども取り入れるよう工夫しています。児童の振り返りで「友だちの意見を聞いて新しいお囃子が出来上がって、グループのイメージに近づけた。」といった内容があったときには、「自分の考えと友だちの考えを合体させたり、それぞれの一部を変えたりすることでさらによくなっていったことに気付いて、話し合いが活発になったグループがあったね。」と私から付け加えて紹介しました。
トラビの振り返りの結果から、お互いに悩んでいることや疑問に思っていることを共有でき、児童同士で「こんなやり方があるよ。」と自由に移動しながら活発な話し合いが行われ、直接的に意見を交換する場面が増えていきました。
- シートの種類
- 継続的な記録のシート
- 質問文
- 新しく分かったことや、これからやってみたいと考えたことについて書いてください。
- 生成AI
- 学級全員や活動グループごとに回答を要約(文章形式)
活用の効果
「やってみたい!」があふれる授業
生成AIの要約結果を示すことで、さらに学んでみたいことや、「お囃子の音楽」をつくっていくにあたって新たに取り組んでみたい技法について、課題を見つけるだけでなく、さまざまな視点から授業に対しての意欲が高まりました。
「お囃子の音楽」をつくることに関して、今回、児童の「やってみたい!」をとても重要視しました。音楽づくりの技法でも、私が提示した工夫以外で試してみたいことや、お囃子の音楽に通常お囃子の音楽では使用しない楽器を取り入れてみて、新しいお囃子を生み出したい!など、要約結果を見て、さらにやりたいことが見つかるといった展開も生まれました。実際に楽器や技法を工夫してみて、さらなる課題が出てきて、日本のお囃子の音楽で使われている楽器のよさや音楽技法を再確認しているグループもありました。
活用前は、児童に意見を書いて提出してもらって、次時の初めに教師が集約した振り返りの内容を児童に伝えていたため、タイムラグがあり、あまり振り返りの効果が感じられませんでしたが、授業の最後に児童の振り返りをすぐ示せたことで、児童の「やってみたい!」が継続し、次時までに児童同士で自主的に考えを深めて修正してくるようになりました。
継続的な記録のシートを見返し、友だちと見せ合い、調整する姿
トラビで継続的な記録のシートを配付したことで、音楽科の学習に対して苦手意識をもっていた児童が、自分の振り返りを見返して自分の意欲が高まっていることに気付いた点で大きな変化が見られました。自分自身を振り返り、何を学び、どのように課題を解決しているかについて考えることができるようになってきて自信がついたようです。
自校では、自主学習カードを紙に記入するスタイルではなく、トラビで実施し始めています。そのため、朝のタイミングでトラビの継続的な記録のシートを振り返る時間が習慣化されていました。そのときに、児童が自発的に課題となる部分を修正して提出することもありましたし、私が朝自習の時間に課題に対する意欲が薄れている児童や、なかなか考えがまとまらないグループの児童に対して「シートをみて、さらに自分たちの音楽づくりをよりよくすることについて一緒に考えてみよう。」と声をかけました。すると、近くの児童が「〇〇さんはどんな振り返りをしているの?」などと声をかけてくれて、そこから会話が広がり、シートを見せ合う姿が見られました。その中で、振り返りの視点も教師の意図していることに自然に修正されていったように感じました。また、お互いに見せ合うことも増えてきて、振り返りの書き方に悩んでいた児童も、自分の思いを文章にして記入できる児童との会話や友だち同士の学び合いの中で育っていったと思います。
それぞれの得意を活かした音楽づくり
児童が感じていることを十分に汲み取って、私の授業展開の課題を見つけることもできました。
児童の中には、やはり個人で音楽づくりをするとなると、「イメージしているものがあるのに、思い通りに音楽をつくることが難しい」と感じていたようでした。だからこそ、グループになったときに、プログラミングをする児童、音楽構造を考える児童、アイディアをどんどん出す児童…といった形で、トラビで振り返りの一覧を私自身も見返して、児童の得意分野を活かせるようなグループ内での話し合いの役割分担を決めることができました。
みんなで一つの音楽をつくり上げることに関しては、全員楽しんでいることも分かり、最終的に、学級全体で1曲作成してみたい、との意見も出てきました。
音楽に関して苦手意識を感じていた児童の中にも、プログラミングで自分の思いが反映できることに気付き、「音楽ってこういった形で自分の思いを表現することもできるのですね。少し音楽が好きになりました。」と話す児童も出てきました。振り返りを見ても、前向きな振り返りが増加していることが分かり、プログラミングを使うよさも感じてくれていることが分かりました。
活用時のポイント
継続的な記録のシートで単元ごとに振り返りをまとめていくと、見返したときに児童が自分自身の振り返りもしやすくなります。
ただ、児童の振り返りの内容を見ていると、授業全体を正確に振り返ることができた内容ではない場合があり、課題がはっきりしていない児童もいるので、全体で確認したあとにもう一度振り返りを修正する時間をとれるとまたさらに内容に対する深まりがあると感じました。
広がる活用シーン
鑑賞の場面で、感じたことを記録する際、学級の意見を生成AIの箇条書きで出すことによって、自分には感じ取れなかった音楽のよさを共有することができるのではないかと思います。また、その結果を踏まえてもう一度鑑賞することで、さらに鑑賞力が高まるのではないかと考えています。
- Scratch®の名称はScratchチームの商標です。