「キラッ人」の探究活動
- 単元
- 目指せ!キラッ人リーダーズ!
- 単元目標
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- 高学年としてスタートを切った自分たちの姿から、1年後に学校のリーダーとして目指す自分たちの姿を想像し、自己実現するために見通しをもって様々な人々と出会い、適切な方法で情報を集めたり整理分析したりする力を身に付ける。
- 出会った「キラッ人」の魅力や考え方の共通点・相違点を見いだし、それらを生かして学校のためにできることについて、考えたことを表現する力を身に付ける。
- 一連の活動を通して考えたことや感じたことを振り返り、最上級生になる自覚をもち、学んだことを異年齢活動や学校生活に生かそうとする。
お悩み
本校でこれまで続いてきた学年児童約100人で同時に実施する総合的な学習の時間においては、探究のプロセス(課題の設定→情報の収集→整理・分析→まとめ・表現)を発展的に繰り返していくにあたり、どうしても100人の前で発表できる発言力のある子どもの意見を中心に展開されがちという課題がありました。
複数のプロジェクトチームに分かれての活動を設定することが望ましい場面や、一時的に課題に対する結論を見いだしたい時など、アイディアをもっているにもかかわらず発言をしない(またはできない)子どもの考えが反映されないことがもどかしく、解決を図りたいと考えていたところです。
実践にあたって
実践において、100人の子どもたちの考えをその時間のうちに集約して分類したり整理したりできるトラビの機能はまさに理想的なものでした。前述のこれまで課題に感じていた部分を解消し、より一人一人の主体的で深い学びにつながるものと考え活用を決めたところです。
工夫としては、主に課題を設定した後の解決方法について見通しを立てる段階で分類機能を活用したり、実践に取り組んだ後の振り返りのタイミングで要約機能を活用したりしたことでしょうか。「キラッ人」とは「人・もの・ことを輝かせることができる人」と定義して学習をスタートしましたが、都度「キラッ人」の再定義をする場を設定したことで、かなり具体的な定義づけに繋がっていったと考えています。トラビによって要約された「キラッ人」の定義には、一人一人の記述が反映されているからこそ、子ども一人一人が納得感をもって探究を続けることができました。
学習の流れ
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第1次
- 「キラッ人」から連想できる身近な人物や施設の方々についてアイディアを出し合い、生成AIで分類する。
- 会いに行って話を聞いたり、仕事ぶりを観察したりしたい「キラッ人」を決め、実際に出会って交流する。
- 各自が出会った「キラッ人」について情報を共有し合い、トラビを用いて「キラッ人」についての考えをまとめる。
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第2次
- キッズワールド(運動会)の開催に向けて、5年生が担当する会場装飾に関してアイディアを出し合い、意見を生成AIで分類して取り組む内容を選択する。
- 一連の活動を振り返って実践を評価する。振り返りを生成AIで要約し、そこから見いだした「キラッ人」についての考えをまとめる。
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第3次
- 5年生のメンバーだけで作り上げる全校行事「はらからお別れ会」開催に向けて、これまでの学習で見いだした「キラッ人」がどのように世界観を作り上げ、エンターテインメントを提供しているのかを学ぶために校外学習としてふさわしい場所を検討する。全員の意見を生成AIで分類して候補を挙げ、校外学習先を決める。
- 校外学習(日光江戸村®)での学びを「はらからお別れ会」にどのように生かせそうか話し合い、役割分担について考える。意見を生成AIで分類し、必要な役割を見いだしていく。
- 「はらからお別れ会」に関する一連の活動を振り返り、生成AIで要約してまとめる。
学習の様子
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- 「キラッ人」の具体をイメージすることができるよう、分類機能を活用しました。ホテルスタッフ、声優、テーマパークスタッフ、清掃員、テレビ局スタッフ、演劇など様々な意見が出てきたため、トラビの最大分類数15件には収まりませんでした。未分類の子どもには発表を促すことで、全員のアイディアが反映された状態を実現することができました。
- 1の際に出てきた「キラッ人」候補のうち、午前中に公共交通機関を利用して給食の時間までに帰ってこられることを条件に、行き先を自分たちで決めました。条件から外れる候補者については、学校にお招きするか、オンラインで交流ができる時間を設定することにしました。
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自分が接した「キラッ人」との交流の振り返り場面と、全体で情報共有をした後に振り返る場面の2回、要約機能を活用しました。前者では、「自分自身を魅力的に見せる『表のキラッ人』と、魅力的な人や場所、物事の裏側でそれらを魅力的に見せられるよう努力している『裏のキラッ人』が存在する」ことを見いだし、後者では「『表のキラッ人』も『裏のキラッ人』も、『何らかの対象を(楽しませたい・素敵な空間にしたい・継承したい等を総称して)輝かせたい』という思いをもって行動し、その思いを叶えるためにキラッ人特有の様々な努力を重ねている」という共通点を見いだしました。
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- 「主役で頑張る6年生を自分たちのサポートでより一層輝かせたい」という思いのもと、依頼された運動会当日の運動場を輝かせる装飾についてアイディアを出し合う場面で分類機能を活用しました。ゲートや看板、顔はめパネルなどのアイディアに分類され、取り組みたい装飾をチームで選択して活動に入っていきました。
- 「主役で頑張る6年生を輝かせたい、任された会場を輝かせたい」という思いをもって活動に取り組み、会場の装飾や係活動に取り組んだ一連の活動を振り返って評価する際に要約機能を活用しました。要約を通して、多くの仲間が「自分たちの姿がまさに『キラッ人』だった」と考えていたり、「自分たちが『キラッ人』になれた」と感じていたりすることに気付きました。
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- 6年生から異年齢活動のリーダーを引き継いだ5年生が、大きな全校行事を企画・運営するにあたり、演劇や遊び作り、会場の装飾などが学べる校外学習先を検討する際に分類機能を活用しました。東京ディズニーリゾート⁠®や日光江戸村⁠®、スパリゾートハワイアンズ⁠®、リトルプラネット⁠®などの候補が挙がり、「目的がどの程度網羅できそうか」「活動時間がどの程度確保できるか」といった視点から検討し、日光江戸村への校外学習が決定しました。
- 「話し方を江戸の時代や身分に合わせて変えている」ことや「ゴミ箱や自動販売機などは目立たないように覆ったり見えづらい場所に設置したりしている」こと、「江戸の侍や忍者などになりきって楽しめるアクティビティを用意している」ことなど、様々な学びを生かして行事の準備を進めていくにあたり、どのような役割分担が必要か話し合う際に分類機能を活用しました。ステージ上での演劇に向けてはシナリオ、音響、照明、大道具、小道具、衣装等の役割が挙がりました。その他会場装飾、アクティビティ作り、当日の運営スケジュール計画等、様々な役割も挙がり、各自が力を発揮したいものに挑戦する形で準備を進めていくことになりました。
- 行事を終えた後の振り返りの際に要約機能を活用しました。取り組んだ役割に違いはあるものの、「1〜6年生まで見ている人を全員笑顔にしたい」、「ステージ上で演技をする友達をより魅力的に見せたい」、「6年生への感謝の気持ちが伝わる進行をしたい」、「みんなにとって最高の思い出になる会にしたい」など、様々な思いの実現に向けて努力する「キラッ人」になることができたという結論に集約されました。
- 生成AI
- 学年全員の回答を分類、要約(文章形式)
活用の効果
「キラッ人」を明確に定義し、児童全員に強い目的意識が生まれる
本校においては、「子どものやってみたいが出発点」という考えを大切にした授業作りに長らく取り組んできた歴史があります。本実践においてもそこを大切にしながら進めてきました。
「キラッ人」という独自の概念を授業の中で扱っていく以上、その定義については子どもたちの間でズレが生じないようにする必要がありました。トラビを使わずに進めていた従来の実践では、前述のとおり、100人の思いや考えを吸い上げることに大きな課題を抱えていたわけです。そうした中、特に第1次の3は本実践の核となる部分であり、ここでのトラビの要約機能活用には大きな効果があったのではないかと考えます。従来の方法であれば、発言力のある子どもの発表を受け、そこに不足している視点や内容については教師の補足が入り込まなければ、目標としている概念の形成は難しかったはずです。トラビの要約機能を活用したことで、「思い(=目標)」こそが行動の原点であること、その上で「努力(=手段)」に目を向ける必要があることが、子どもたちの記述によって補完されていきました。
独自の概念の定義を確かめながら実践を進めたことの効果は、校外学習先における学びの視点の形成にも大きく影響したのではないかと考えます。日光江戸村という、校外学習で訪れると夢中になって楽しむことが予想されるような活動場所で、各自が第3次の2のような学びを得られるようにするためには、子どもたちの中に強い目的意識が芽生えていることが大前提です。その目的意識は明確に定義付けられた「キラッ人」の概念と、「はらからお別れ会」を作り上げるという目標によって形成されたといえます。
出会いたい「キラッ人」や、校外学習の行き先について候補を出し合う場面では、分類機能が大いに役立ちました。ここでも、従来であれば発言力のある子どもの提案だけが板書され、そこから教師の意向も少なからず加えられたリストから子どもたちが選択することになっていたでしょう。分類機能の活用をした今回も、教師の意向は含まれたものの、その数は最小限にとどまっていたように思います。そうした中から子どもたちが選択したり、一つに絞ったりする活動に移行できたことで、子どもたちの「やってみたい」を常に反映させた授業展開にすることができました。
活用時のポイント
強いて挙げるとするならば、分類機能によって分類されなかった子どもの声をきちんと吸い上げることの大切さでしょうか。多数派の考えは反映されることが多いので、むしろ少数意見を誰がもっているのかがわかることも、この分類機能の大きなメリットだと考えます。そこにスポットを当てることが、これまで実現が難しかった授業を作り上げることにつながると思います。
広がる活用シーン
本実践は総合的な学習の時間での取り組みになるため、探究のプロセスを大切にしたい全ての授業において応用が可能ではないかと考えます。要約機能については、集団で方向性を定めたり、一定の結論を導き出したりする際にその効果が大きくなると思います。分類機能については、活動の選択肢や注目すべき観点について出し合いたい時にその効果が大きくなると思います。集団で合意形成を図る必要があるような学習活動の際は、そのための手段として活用を検討されると良いのではないでしょうか。
- 日光江戸村®は株式会社時代村の登録商標です。
- 東京ディズニーリゾート®は米国法人ディズニー・エンタプライゼズ・インクの登録商標です。
- スパリゾートハワイアンズ®は常磐興産株式会社の登録商標です。
- リトルプラネット®は株式会社リトプラの登録商標です。