学習のまとめも評価活動も簡潔に
  • 小学校6年生
  • 国語
茨城県潮来市立延方小学校 髙口 典
※掲載内容は、2025年8月時点のものです。
単元
『鳥獣戯画』を読む / 発見、日本文化のみりょく
単元目標
  • 自分の考えを伝えるための筆者の工夫を捉え、効果的だと思ったことを友達と伝え合う。
  • 「『鳥獣戯画』を読む」で捉えた筆者の工夫を用いて、選んだもののよさが効果的に伝わる文章を書く。

お悩み

学習のまとめを共有する作業に時間がかかることに課題を感じていました。短文で集約する際、文言の取捨選択が難しく、児童と一緒に練り上げていくときに、上位の児童の意見が中心とならざるを得ない現状がありました。

相互評価を行う場面において、一人一台端末で入力した作文に対して即時にコメントを送信できる学習アプリを使用したときは、作文とコメントが混在する状態になり見づらい結果となりました。学びを広げるためにグループ化を行い、他の児童のコメントを閲覧することもできますが、グループの人数に伴い、画面に情報が散在する状態になってしまいました。また、それ以前に友達の作文に対してコメントが浮かばない児童がいることも気になっていました。

「書く」学習においては、多くの時間とエネルギーを要します。児童の意欲が持続しないため、自分の積み上げを可視化できる手立ての必要性を感じていました。

学習の流れ

  1. 第1~3時

    • 「『鳥獣戯画』を読む」から学習計画を立て、筆者の工夫を活用しながら日本文化の紹介文を書くというゴールのイメージ、見通しをもつ。
    • 筆者の評価を捉える。
    • 筆者のものの見方を伝えるための工夫について考える。
  2. 第4時

    日本文化に関する本や資料を読み、友達と感想を伝え合う。
  3. 第5~8時

      • 「発見、日本文化のみりょく」の学習の見通しをもつ。
      • 題材を決めて情報収集を行い、 文章構成や表現の工夫について考える。
    1. 日本文化の良さを伝える紹介文を書く。
  4. 第9~10時

    1. 友達と紹介文を読み合い、考えを広げたり深めたりし、よりよい文章の書き方について確かめ、トリエルを使って相互評価を行う。
    2. 友達の紹介文から見取った効果的な表現について、トラビで集約し、共有する。
  5. 第10時

    学習を振り返る。







学習の様子

単元を通してトラビを活用した振り返りの蓄積を行い、児童が自分の学習の軌跡を実感できるようにしました。

また、評価活動では事前にトリエルで4人程度のグループを編成しておき、テーマを各自の名前に変更させました。そうすることで、各児童のコメント欄を用意できます。
一人一台端末を2画面表示にし、一方には作文、もう一方にはチャット画面にすることで双方を行き来しながら学習活動に取り組みやすくなると考えました。

学習のまとめでは、友達の紹介文やグループ内で交わされたコメントをもとに、より効果的な表現についてトラビで集約を行いました。児童はトリエルの画面も参考にしながら、自分なりの考えを表現することができていました。生成AIで要約を行った結果、ほとんどの児童が「自分の意見が入っている」というリアクションをしており、内容についても納得している様子でした。


トラビ
  • 単発のシート / 継続的な記録のシートを配付
  • 学級全員の回答を要約(文章形式)
トリエル
班ごとにトリエルのグループを作成

活用の効果

学力差に関係なくみんなでつくる本時のまとめ

国語科においては、意見の集約にかかる時間を短縮できるというところが大きいと感じました。教科の特性として、文章で回答することが多いため、回答類型の幅が広く、微妙な文言の違いにより集約が容易ではないと常々感じてきました。それをわずかな時間で要約するトラビは、1単位時間内の学習活動に余裕を持たせるとともに、自力解決やまとめ、振り返りの時間を十分に確保することができ、授業者としても、授業の時間配分がしやすくなります。何より、教師の専門性や経験年数による授業スキルに左右されないことも大きな利点であると感じました。

また、国語科の学習では、例えば、算数科の学習のように「割合について学ぶ」「比例について学ぶ」など授業内容に即した簡潔なまとめを作る機会があまりありません。本時の学習内容を一度俯瞰し、教材で学んだことを一般化しながら作り出す必要があるため、児童間の学力差が大きい本学級では、上位の児童がまとめ上げたものを視写する児童が半数以上いました。トラビの要約は、集まった回答が拙い文章であっても適切な言葉を選択しながら一般化してくれるため、児童に簡潔明瞭な文章を提示するという点でも効果を感じます。下位の児童には、文章化が難しい場合はキーワードの羅列でも構わないことを伝え、児童全員の授業への参加意識や本時の学習に対する納得感を持たせることにつながりました。

授業で「さて、今日も生成AIにみんなの意見をまとめてもらおう。」という投げかけを行うと、自分の意見は含まれているだろうかとわくわくした様子で要約結果を待つ様子が見られました。自分の意見や考えが反映されるため(ことを期待して)、本時のまとめをより「自分ごと」として考えるようになっていました。今までよりも前向きに自分の意見を送信するようになった児童がいたり、中には「私の意見は部分的に含まれている。違いは何だろう。」と、要約結果と自分の考えを改めて比較し、再検討する児童もいました。

リアルタイム性と見やすさの両立により、活動に集中

従来、付箋を用いて行っていた相互評価ですが、トリエルを活用したコメントの送信は動作や準備物を最小限にし、評価活動に専念することができました。

テーマを各自の名前に設定することで、A児童のスペースにはA児童の紹介文に対するコメント、B児童のスペースにはB児童の紹介文に対するコメントのみが投稿されます。また、どの児童がどのようなコメントをもらったのか、グループ内で共有することもできます。タブレットを2画面表示にし、一方には原稿(現実世界)ともう一方にはコメント(ネットワーク空間)をシームレスに往還することで自らの考えを練る時間と協働的に学ぶ時間を確保することができたと思います。

リアルタイムでコメントができるため、友達からの質問にその場で答えるなど、やりとりをしながら学ぶことができていた点も良かったと感じました。

学習の足跡を確認し、学びの見通しを持つ

トラビでの振り返りは、これまでの学習の足跡の確認となり、児童は本時の学びをより確かなものにするとともに、次時の学習で「何ができるようになればいいのか」、「どのような修正や追加作業が必要となってくるのか」等を具体的に把握することができました。児童によっては、数時間前まで遡り、自己調整を行っていました。毎時間トラビで振り返りを行い、各過程における自分の到達度や次回に向けた課題を記録することで次時の見通しをもつことができ、主体的な学びに繋がったのではないかと思います。

広がる活用シーン

物語文において、登場人物の心情を読み取る場面、詩の授業で作者の思いや意図を読み取る場面でもトラビの生成AIの機能を活用できると思います。特に心情においては、話し言葉を使用したり心情語彙を使用したりと文言が微妙に違うことが想定されるため、トラビによる集約、分類は大きな役割を果たすと思われます。